地形
芹谷屏風岩は石灰岩のクライミングエリアです。
その石灰岩は、遥か古代に太平洋上に発生した火山島の周辺に形成された珊瑚礁が、大陸プレート移動に乗って、やがてユーラシアプレートに衝突し強い圧縮と熱が加わり、石灰岩に変性形成されました。
Webサイト「ジオパーク秩父」より引用
また、日本列島の誕生よりはるかに古い7000万年前、超巨大噴火が起こり「湖東カルデラ」を出現します。
カルデラ形成解説 参照web 発見!地球号~滋賀の大地~
画像はWebサイトより引用
湖東カルデラは、東の鈴鹿〜南の田上〜西の比良にある花崗岩帯で見られるように滋賀盆地を形成する巨大なカルデラ地形を形成しました。湖東地域にある湖東流紋岩帯はこのカルデラ内での活発な火山噴火で出来た火山ドームや火砕流の痕跡です。この湖東流紋岩は滋賀のボルダリングエリアとして点在し、また滋賀を囲む花崗岩帯の岩場は、双方共クライミングエリアとしてよく登られてれています。
地表面の地質的には、鈴鹿の八風峠を境に南は花崗岩帯、北は石灰岩帯となります。
この石灰岩は、ユーラシアプレートに乗っかった石灰岩地層が、この湖東カルデラ帯に堰き止められ溜まり、鈴鹿東縁断層帯の活動隆起で露出したものであると憶測されます。やがて長い時間を経て大地は侵食され、この石灰岩帯はカルスト地形が形成されていきました。
多賀町のカルスト地形層は、古第三紀中新世から鮮新世(おおよそ2300万年前から500万年前)の時代に形成されました。鈴鹿山系北端に座する霊仙山は、カレンフェルトやドリーネ、大きな鍾乳洞を形成する顕著なカルデラ地形が所見されます。
この霊仙山を水源とする芹谷は、下流を大きく削るV字谷を形成し、芹谷屏風岩はその浸食作用で地表に露出した岩壁であります。
多賀町屏風
クライミングエリアである屏風岩は、滋賀県多賀町屏風区に所在し、屏風区の財産区となっています。
この屏風区は岩場の上部に所在し、数軒が集落を形成しています。集落の起源は定かではありませんが、江戸時代から存在したことが分かっており、盛期には100人を超える住人が暮らしていまた。かつては住人の殆どが林業、炭焼きを生業にしていましたが、後谷に石灰岩を採掘する鉱山が開業すると、屏風の住人もその多くが鉱山に就業するようになりました。これにより住人は安定的な現金収入を得られるようになり、集落は一時活況を帯びました。集落の家屋を見ると瓦葺の屋根が多く、当時の豊かさを伺い知ることができます。しかしながら、その後しばらくして鉱山が閉鎖されると、それと共に屏風集落も衰退の一途を辿ることとなりました。
現在は、住民の方々が集落(神社、寺、墓地等)を管理保全され、今も美しい山村集落の姿を今にとどめております。
クライミングエリア
1987年ごろより永井久雄氏など同人蜘蛛の糸を中心としたクライミンググループが、屏風岩をフリークライミングを行う岩場として整備(開拓)しました。(ルート数 約50本程度)その後、クライミングエリアとしてクライミング雑誌や山岳書籍に「芹谷屏風岩」としてガイド掲載され、全国に紹介されました。以降主に関西・中部圏のクライミング愛好者が数多く当地を訪れ、これまで数多くのクライマー達がこの屏風岩でクライミング活動を行ってきました。
ここでのクライミングは春・秋季が主なシーズンとされ、現在でも多い時には週末に10~20名の来訪者があります。近年の入山者傾向としては、開拓当初からのクライマーの来訪は減り、新規の方や次世代の若いクライマーも増え、老若男女問わずこの地でクライミングを行っています。
岩場周辺の自然環境は、開拓当初と大きな変化は見られませんが、露岩した地面や岩場の一部に崩落の恐れがある箇所も見受けられます。また岩場までの登山道も、県道に落石防護柵が設置された加減で、開拓当初とは一部経路が変わっています。(開拓当初の案内情報は古くなり、現状と合わなくなっています)
来訪者の駐車スペースとしては、旧芹谷小学校跡地前の路側帯を利用させて頂いています。無許可での利用ではありますが、路肩駐車等で起きる交通障害やトラブルなどないように配慮願います。
岩壁面には、クライミング中の安全確保のためのアンカーボルトが打たれています。(φ10~12mmの金属製の拡張アンカーボルト・一部チェーン付き、1ルート5~10本程度)このアンカーボルトの中には、経年劣化で一部切断・脱落の恐れがあるものが確認され、2023年春季にJFAにより屏風エリアはリボルトされました。(小屏風エリアは随時行っていきます)また、登山道を含む岩場周辺の急傾斜部や歩行困難な箇所には、手摺になる補助ロープ等を張り、また小屏風エリアへのアプローチも新規ルートを設定しました。
過去にクライマーが起因する重大事故やトラブルは無かったと記憶していますが、クライミング中に発生した事故にて救急搬送される事例は時折あります。